FPは独立できる?開業に必要な条件とリアルな実情

未経験から独立系FP(ファイナンシャルプランナー)を育成するワンクエスト代表の井 章弥です。
この記事では、僕が独立系FPとして約10年間、現場で培ってきたリアルな経験をもとに、独立開業の現実と可能性を詳しく解説します。
「FPって資格を持っていれば食べていけるの?」「独立して成功できるのは一部の人だけ?」そんな疑問を持っている方は少なくありません。実際、FPとしての独立は資格を取得することよりも「ビジネスとしてどう成り立たせるか」の方がはるかに難しく、考えるべきことも多いです。
この記事では、独立に必要な条件、業界の実情、成功のための工夫などを一つひとつ紹介していきます。特にこれからフリーランスとしてFPの道を選ぼうとしている方や、資格を取ったばかりの方には役立つ内容となっていますので、ぜひ最後までお付き合いください。
フリーランスとしての開業は簡単
ファイナンシャル・プランナー(FP)として独立・開業すること自体は、実はとても簡単です。
というのも、FP業は特定の国家資格がなくても名乗ることができ、開業にあたっての法的なハードルが非常に低いためです。
資格はあった方が良いが“必須ではない”
FPには「AFP」や「CFP」(日本FP協会)、「2級FP技能士」「1級FP技能士」(国家資格)など、いくつかの資格がありますが、これらの資格がなくても「ファイナンシャル・プランナー」を名乗ることは可能です。つまり、たとえば会社を辞めて「今日からFPとして活動する」と決めれば、すぐにでも名刺を作り、SNSで発信し、ビジネスをスタートさせることができます。
ただし、資格を持っていると、顧客からの信頼度が格段に上がるのも事実です。特に初対面の顧客とのやり取りでは「CFP保有者です」「国家資格の1級FP技能士です」といった肩書きが非常に効果的です。
開業届の提出だけでOK
開業届を出せば、フリーランスとしての活動をスタートすることができます。
開業手続きとしては、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出するだけで完了します。ついでに「青色申告承認申請書」も提出しておくのがおすすめです。
法人との取引が出てくるまでは、インボイス制度対応のための「適格請求書発行事業者」は登録しなくてOKです。これは取引先から依頼があった時に検討しましょう。
最小限のコストで始められる
FPの独立は、ほとんど初期費用をかけずにビジネスを始められるのも魅力です。
在庫を抱えることもありませんし、自宅をオフィスにしてオンラインで相談を受けることもできますし、SNSを名刺代わりにしてスタートすることも可能です。
「独立=高いハードル」と思われがちですが、FPに関しては始めること自体はとても簡単です。
見込み顧客は"すべての人"
ファイナンシャル・プランナーとして独立を目指すうえで、多くの人が不安に感じるのが「果たして仕事があるのか?」という点です。
しかし、結論から言えば、FPが必要とされる場面は非常に多く、見込み顧客の母数も膨大です。
誰もが「お金」に悩んでいる
お金に関する悩みは、どんな年齢・職業・性別の人でも持っています。たとえば、以下のような悩みは、誰しも一度は感じたことがあるのではないでしょうか?
・「住宅ローンってどれくらい借りられるの?」
・「教育資金はどう準備すればいいの?」
・「老後に2,000万円本当に必要なの?」
・「NISAやiDeCoって自分に必要?」
これらすべてがFPの専門領域です。つまり、見込み顧客は「ほぼ全員」と言っても過言ではありません。
リピートや紹介も多い
お金の悩みは、人生の各ステージで変化していきます。
【独身・若手社会人】→ 貯金の仕方、NISA、保険の必要性
【結婚・子育て期】→ 住宅購入、教育費、家計管理
【中高年】→ 老後資金、退職金運用、相続対策
【シニア層】→ 年金の受け取り方、資産の取り崩し、相続準備
ライフステージが変わるごとに顧客から相談があるため、一度信頼関係を築ければ、長期的な関係を構築しやすいビジネスでもあります。
そして、信頼されれば友人や家族を紹介されることも多く、丁寧にビジネスに取り組めば、収入は安定しやすい仕事です。
「お金の相談をしたい人」は確実に増えている
近年、投資や資産形成に関する情報がSNSやYouTubeで広まったことで「お金のことを自分でも考えないといけない」という意識を持つ人が増えています。特に20〜40代の若い世代を中心に、「中立的なアドバイザーに相談したい」というニーズが高まっています。
これは、保険営業や証券営業と違い、販売ノルマのない独立系FPにとっては追い風です。顧客にとっても「売りつけられない安心感」が大きなメリットになります。
FP業界は「競争が激しい」と言われることもありますが、実際にはニーズが尽きることのない「広大な市場」です。求められるのは「どんな人に、どんな価値を提供するか」という視点での差別化です。
独立開業は孤独
フリーランスのFPとしての独立は、始めるだけなら手続きもシンプルで、ニーズも豊富に存在します。ただし、ここからはもう少し現実的な視点から、その裏側にある課題についてもお話ししていきたいと思います。
その代表的な悩みの一つが、「想像以上に孤独な働き方になる」という現実です。
情報が少ない業界での手探り状態
FP業界は医師や税理士のように「開業の王道パターン」が確立されているわけではありません。書店に行っても、独立系FPのリアルなノウハウが詰まった本は少なく、ネットにも断片的な情報ばかり。
僕自身も独立初期は「みんなどうやって顧客を獲得しているのか?」「料金はどう決めてるのか?」といった基本的なことすら分からず、非常に苦労しました。つまり、独立直後のFPは、道なき道を自分で切り開く必要があるのです。
コミュニティが乏しく、相談相手がいない
フリーランスFPには同僚も上司もおらず、孤独な働き方になりがちです。
・この料金でお客様に納得してもらえるだろうか?
・初回面談で信頼を得られる話し方は?
・この顧客はお断りしたほうが良いか?
こういった悩みを共有できる相手が周囲にいないと、精神的な消耗が積み重なり、最悪の場合は挫折につながります。
SNSでの発信も「孤独の中の戦い」
最近ではX(旧Twitter)やYouTube、ブログを使って集客する独立系FPも増えていますが、情報発信も孤独な作業です。
反応が得られなかったり、誤解されたり、炎上リスクもあります。しかも、それらの活動がすぐに成果に結びつくとは限りません。
独立FPとして成功するには、知識やスキルだけでなく「孤独に耐える力」「悩みを言語化して自力で整理する力」が求められます。これは非常に消耗する作業ですが、だからこそ、次章で述べる「FP事務所に所属する」という選択肢も検討されるのがおすすめです。
FP事務所に所属するのもあり
FPとして一人で活動を始めると、自由度が高い反面、多くの不安や孤独と向き合うことになります。
そこでおすすめしたいのが、最初は「FP事務所に所属する」という選択肢です。これはいわゆる「就職」とは異なり、フリーランス契約のまま、事務所とパートナー的な関係を築くスタイルが一般的です。
ノウハウを先輩から学べる
独立直後は「どのように相談を進めるのか」「料金設定はどうするのか」といった実務面で悩みが多く発生します。
FP事務所に所属すれば、既に実績のある先輩FPから直接ノウハウを学べるため、遠回りせずに実力をつけていけます。
また、顧客対応で困ったときにも、すぐに相談できる環境があるのは心強いものです。
マネタイズの手段を知れる
FP事務所に所属することで、収益化のための具体的な方法や仕組みを、実務を通じて学ぶことができます。
たとえば以下のような収益手段があり、それぞれについて実践的に理解を深めることができます
・相談業務に対する報酬の組み立て方
・セミナー登壇による講演料の獲得
・執筆・監修業務による報酬の得方
・保険や金融商品を扱う際の手数料の仕組み
「お金の専門家」であるFPが、自分のビジネスのマネタイズ手段を学ぶことは極めて重要です。
所属事務所の支援を受けながら実践経験を積むことで、自分なりのビジネスモデルを築いていく足がかりになります。
フリーランスなので、縛りはない
多くのFP事務所では、フリーランスとしての自由な働き方を尊重する文化があります。
所属しながらも自分のSNSを運営したり、個人でクライアントを持ったりと、独自のブランディング活動を続けることが可能です。つまり「学びながら、自由にも動ける」ハイブリッドな環境が手に入ります。
独立を目指すなら、最初から完全に一人で戦うよりも、先に道を切り開いている人のそばで学びながら力をつける方が、結果的に早く成長できます。そのため、FP事務所への所属は非常に有効なステップだと思います。
完全に独立するタイミング
FP事務所に所属して実務経験を積み、マネタイズの方法や顧客対応のノウハウを学んでいくと、次第に「そろそろ自分の力でやってみたい」と感じるようになるタイミングが訪れます。
ここでは、完全に独立するべきタイミングの見極め方についてお伝えします。
学べることがなくなった時
「同じような業務の繰り返しで、最近は新しい学びがない」
「これ以上この環境では成長できなさそう」
そう感じたときは、自分の次のステージへ進む合図かもしれません。新たなチャレンジとして、独立して自分のブランドを築くことで、さらに一段上の成長を目指せます。
FP事務所に将来性を感じられなくなった時
所属しているFP事務所のビジネスモデルや価値観が、自分の理想とかけ離れてきたときも、独立を考えるタイミングです。
・特定の商品販売に偏りすぎている
・顧客第一の姿勢が薄れてきている
・デジタル化や情報発信への対応が遅れている
このような状況が続くと、自分の理想の働き方とのギャップに悩まされるようになります。自分の信念を大切にするために、完全独立という選択を取る人は少なくありません。
完全独立にはリスクもありますが、それ以上に「自分の理念を軸にした働き方」ができる自由を取るのもアリです。自分の実力に自信を持てるようになったら検討してみましょう。
いかがでしたか?
FPとして独立する道は、資格や手続きの面ではとても簡単に始められます。しかし、ビジネスとして成立させ、継続的に収入を得るには、戦略的な工夫が不可欠です。まずはFP事務所に所属する形でスタートするのも良いかもしれません。もし独立系FPに興味のある方は、ぜひ他の記事もご覧になってみてください。
「未経験から独立系FPを育成する講座」の新規受講者も募集しております。僕や実際に独立系FPとして活躍する先輩が相談に乗りますので、ご興味のある方はお気軽にカウンセリングフォームからお申し込みください。