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独立系FP(お金の先生)という生き方

独立系FPは商品提案を控えるべきか?

未経験から独立系FP(ファイナンシャルプランナー)を育成するワンクエスト代表の井 章弥です。

この記事では、僕が10年間にわたって独立系FPとして積み重ねてきたリアルな経験をもとに「独立系FPは商品提案を控えるべきか?」について詳しくお伝えしていきます。

独立系FPをビジネスとして捉えるのであれば、中立性と同じくらいに大事なのが「収益性」です。

この収益性と中立性のバランスをどのように取っていくべきかが難しいところでもあり、「本当の顧客ファースト」を考えさせられる場面でもあります。

今回は「商品紹介による中立性と収益性」に焦点を置いて、独自の目線で解説していきます。

これから独立を目指す方はもちろん、すでにFP資格を持っていて働き方を模索している方にも、きっと役立つ内容になっています。どうぞ最後までお付き合いください。

独立系FPの定義は明確ではない

「独立系FP」という言葉はよく使われる表現ですが、実はその定義は非常に曖昧です。

一見すると「独立=中立=相談料だけで運営しているFP」と思われがちですが、実際にはさまざまなタイプの“独立系FP”が存在します。

独立系の保険代理店としてのFP

まず、最近多くのFPが活動しているスタイルが「独立系の保険代理店」としてのFPです。これは、特定の1社ではなく、複数の保険会社の商品を取り扱い、顧客にとって最適な保険を選べることを売りにしています。

▼ポイント
・保険会社からの販売手数料が主な収入源
・商品ラインナップは広く、比較・提案ができる
・中立性を保ちやすいが、収益が保険販売に依存しがち

このスタイルは、相談料を無料にする代わりに保険商品で収益を得るという、いわゆる「無料相談モデル」として広まっています。

IFA(独立系証券アドバイザー)としてのFP

一方で、証券分野に特化した独立系FPも存在します。それがIFA(Independent Financial Advisor)です。IFAは証券会社から独立して活動しながらも、金融商品取引業者と提携し、株式や投資信託などの運用提案を行います。

▼ポイント
・証券会社と提携して金融商品を扱う
・顧客資産に対してフィー(報酬)を得るモデルが多い
・中長期的な資産運用アドバイスが中心

IFAは欧米では一般的ですが、日本ではまだ広く認知されていないのが現状です。ただし、長期的な信頼関係を構築しやすいモデルともいえます。

相談料だけのビジネスは成り立たない

FP業界において、「中立性」を保つためには、相談料だけで運営するスタイルが理想だと言われることがあります。

しかし、今の日本でこのモデルをビジネスとして成立させるのは非常に難しいのが現実です。なぜなら、相談に対して適正な対価を払うという文化が、まだ日本には十分に根付いていないからです。

日本では「無料相談」が当たり前?

日本の金融サービスにおいて、「無料相談」は長年の慣習のようになっています。

特に保険や住宅ローンの相談では、保険ショップや銀行窓口などで「無料」を前面に出して集客するスタイルが一般的です。

その結果、一般消費者の多くは「FP相談=無料で受けられるもの」という意識を持っており、1時間1万円〜2万円といった相談料を払うことに抵抗を感じる人も少なくありません。

たとえば、欧米では弁護士や会計士と同じように、FPに対してもしっかりと報酬を払う文化があります。

ところが日本では「無料で丁寧に教えてくれるなら、そっちのほうが良い」と考える人が多数派です。これが、相談料ビジネスの難しさにつながっています。

富裕層向けなら成り立つことも

もちろん、すべてのケースで成り立たないというわけではありません。

一定以上の資産を持つ富裕層に対しては、「相談料を払ってでも中立的なアドバイスを受けたい」と考える人がいます。実際に、相続・事業承継・資産運用などの高度な相談を専門にして、相談料のみで成功しているFPも存在します。

ただし、これには高度な専門性、実績、そしてインフルエンサーになるなどの「世間からの認知」が必要です。そのため、相談料だけで生活できている独立系FPは極わずかです。

商品提案=顧客本位でないのか?

「商品を売るFPは信用できない」と言う人がいます。しかし、ここには少し立ち止まって考えるべき点があります。

たとえば、病院で医師に診察を受けたあと、「薬の処方は一切しません。診断だけで終わりです」と言われたらどうでしょうか? 多くの人は「じゃあ、この不調はどうすればいいの?」と戸惑うはずです。

FPも同じです。ライフプランを立て、問題点を洗い出し、実行の手段として最適な金融商品を提案することは、むしろ感謝されることが多いです。

重要なのは「何を売るか」ではなく、「なぜその提案をするのか」が明確であり、顧客の利益に合致しているかどうかです。つまり、「商品提案=顧客本位でない」とは一概には言えません。

継続できなければ、顧客のためになれない

また、FPという仕事は「継続性」があってこそ、顧客の人生に寄り添うことができます。

ライフプランというのは一度作って終わりではなく、結婚・出産・住宅購入・転職・老後など、人生のステージごとに見直しや調整が必要になります。

しかし、相談料だけでビジネスが成り立たず、FP自身が生活に困って廃業してしまえば、顧客へのサポートも途切れてしまいます。いくら素敵な理念があっても、継続できなければ意味がないのです。

これが商品提案なしで、相談料だけでマネタイズする独立系FPの難しさです。

「独立系FPの定義」は自分で決めよう

綺麗事はさておき、独立系FPビジネスを展開するには、「FP業界の現状」や「顧客心理」がどうなっているかを認識しましょう。

そのうえで、自分なりの「顧客ファースト」を真剣に考えて、独立系FPの業務に取り組んでいくことが大切です。

独立系FPのマネタイズには様々な手段があります。そして、多様な手段を持っていれば、偏った提案にならずに顧客ファーストを貫けると僕は考えます。

ここまでお読みになった方は、以下の記事もご覧になると、より独立系FPビジネスへの理解が深まるかと思います。

『独立系FPの収入源(稼ぎ方)って何?』

『他のFPと差をつける!独立系FPのブランディング戦略』

いかがでしたか?

独立系FPは自分の価値観やライフスタイルに合わせて、柔軟にカスタマイズできる魅力的な仕事です。様々な考え方がありますが「自分なりの正義感」を持つことが大切だと思います。もし独立系FPに興味のある方は、ぜひ他の記事もご覧になってみてください。

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