BLOG 日本にお金を学ぶ文化を創る
独立系FP(お金の先生)という生き方

Jリーグの選手向けに金融教育を実施して気づいたこと

未経験から独立系FP(ファイナンシャルプランナー)を育成するワンクエスト代表の井 章弥です。

いつもは独立系FPで成功するためのノウハウを書いていますが、今回は「Jリーグチームでの金融教育を実施した経験」について綴っていきます。

アルビレックス新潟さんへの金融教育

現在、サッカーのJ1リーグで活躍されている「アルビレックス新潟」に所属する選手の皆様を対象に、金融教育を担当させていただきました。

開催は2022年6月。「Jリーガーが現役時代からお金について学ぶべき理由」をテーマに、全3回の講義を実施しました。

開催の経緯

ワンモアフットボールマガジンさんに取材いただいた記事をきっかけに、元Jリーガーの方からご連絡をいただきました。

その方は現役時代から賢く資産形成に取り組み、引退後も経済的に安定した生活を実現されていました。一方で、現役選手が資産形成について十分に考えていない現状に危機感を抱かれており、「ぜひ金融教育の講義を行ってほしい」とご依頼をいただきました。

ご相談いただいた方がかつて所属されていたのがアルビレックス新潟でした。ちょうど同クラブも選手へのサッカー以外の教育に力を入れていたタイミングだったこともあり、勉強会の開催が決定しました。

サッカー選手に金融教育が必要な理由

開催のきっかけを頂いたJリーガーの方が「現役時代から金融教育が必要な理由」を教えてくれました。

サッカー選手といえば、華やかな舞台で活躍し、若いうちから多くの収入を得る職業の代表格です。

しかし、その裏側では、金銭トラブルや将来への不安を抱えている選手も少なくありません。

若くして大金を手にするリスク ― 金銭感覚の崩壊

サッカー選手は10代後半から20代前半という若さで、年収2,000万円近く稼ぐ人もいます。

その結果「お金はいつでも入ってくるもの」という感覚が身についてしまい、使い方が雑になったり、浪費癖がついたりしがちです。

現役を引退後、急激に収入が減ったときに苦労する選手が多いのも、この金銭感覚のズレが原因です。

若いうちから「投資・消費・浪費」の違いを学び、正しいお金との付き合い方を学ぶことが重要です。

詐欺のターゲットになりやすい

サッカー選手のように若くして大きな収入を得る職業は、詐欺師や悪質な投資案件のターゲットにされやすいという現実もあります。

実際に「かぼちゃの馬車」事件のような不動産投資詐欺にアスリートや有名人が巻き込まれたケースもありました。

「かぼちゃの馬車」は、シェアハウス投資をうたって多くの人から資金を集めていたものの、実態は経営破綻。多くの出資者が多額の借金を背負い、人生設計が大きく狂わされました。

このような事件は「うまい話」に惑わされず、しっかりと自分で情報を見極める力がないと、簡単に大きな損失につながります。

“人付き合い”が生むムダな保険加入

サッカー選手の世界では「先輩に勧められた」「知人の紹介で」といった人間関係から必要以上の保険に入ってしまうケースが非常に多くあるようです。

本当に必要な保障かどうかを考えず「付き合い」で契約してしまい、毎月大きな保険料を払い続けてしまう選手も少なくありません。

現役時代の収入で積立金額が設定されていることも多くあり、引退後にそれを支払うことができず、お金が減って返ってくることも多いです。

移籍が多いからこそ、ライフプラン設計が重要

サッカー選手は移籍が多い職業です。そのたびに住まいや生活拠点をどうするか、マイホーム購入のタイミングや住宅ローンの組み方で悩む人も少なくありません。

「せっかく家を買ったのに、すぐに引っ越しに…」となり、住まいの計画が崩れないように、若いうちから住宅ローンなどの戦略が必要です。

実際に選手と話して感じたこと

90分×3回の講義を実施し、4名の選手とは個別にもじっくりお金の相談に乗りました。

1番強く感じたのは、やはり年齢が高い選手ほど金融について学ぶ意欲があるという点です。

「今住んでいる地域で家を買うべきか」
「妻名義でもNISAを始めた方がいいか」
「NISAやiDeCo以外におすすめの投資はあるか」
「今の保険を解約すべきか」

といった具体的な相談は、いずれも30代の選手から寄せられました。

もう一つ強く感じたのは「安心してお金の相談ができる相手(FP)がいない」と多くの方が感じていることです。

これはサッカー選手に限らず、アスリートや芸能人全般に共通する悩みかもしれません。周囲には怪しい人物が近づきやすいこともあり、警戒心が強くなり「誰に相談すればいいのかわからない」と感じている方が多い印象です。

だからこそ、チームの運営組織が主体となり金融教育の機会を設け、選手自身が「信頼できる」と感じたFPにだけ相談できる仕組みを作ることが、選手の安心や将来につながるのではないかと思いました。

次回、取り組む時に改善したいこと

また、講義を通じて感じた課題もありました。それは、年代によって響くテーマが大きく異なるということです。

今回、18歳から35歳まで幅広い年代の選手が参加したことで、例えば18歳の選手からは「銀行預金にも利息が付くんですね!」といった驚きの声が上がりましたが、こうした初歩的な内容は35歳の選手には物足りなく感じられたようです。

次回以降は「年齢別」で講義を開催し、それぞれの世代に合わせた内容にすることが必要だと強く感じました。

職種によってお金の悩みは様々

今回はサッカー選手に関する内容でしたが、独立系FPとして、オリンピック金メダリストやアーティストの方からもお金のご相談をいただくことがあります。

一般の会社員とはまったく異なるお金の悩みを抱えているケースも多いため、今後はこのような経験についても、書ける範囲で情報発信していきたいと思います。

また、一緒に独立系FPビジネスを盛り上げていける仲間を募集中です。少しでも、独立系FPに興味のある方はぜひ他の記事もご覧ください。

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