独立系FPと保険営業FPの違いを徹底比較

未経験から独立系FP(ファイナンシャルプランナー)を育成するワンクエスト代表の井 章弥です。
最近、独立系FPの仕事に関心を持つ人が増えてきています。この動きは非常に嬉しい一方で、社会的な認知度はまだまだ高いとは言えず、これから本格的に伸びていく市場だと日々実感しています。
そんな中で、よくある勘違いがあります。それは「FP=保険屋さん」と思われていることです。
僕自身、独立系FPとして10年以上活動していますが、これまでに何度も「ファイナンシャルプランナーです」と自己紹介した時に「保険屋さんですか?」と聞き返される経験をしてきました。
このように、一般の方から見た「FP」のイメージには大きな誤解が残っています。そこで本記事では「独立系FPと保険営業FP(保険外交員)の違い」について、詳しく解説していきます。
「これからFPを目指したい」という方には役立つ内容かと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
違い①「売るものが決まっているか」
独立系FPと保険営業FPは、扱う商品やスタンスに大きな違いがあります。特に大きな違いが「最初から売るものが決まっているかどうか」という点です。
保険営業FPは「自社商品ありき」
保険会社に所属しているFPの場合、基本的に自社が取り扱う保険商品をお客様に提案します。つまり、最初から販売できる商品が決まっている状態です。
もちろん、お客様のニーズをヒアリングしてプランを考えますが、提案できる選択肢は保険に限定されるケースがほとんどです。
そのため「本当にこの人にとって保険はベストな選択肢なのか?」という部分が疑問視されることもあり、顧客もこの部分に対して警戒心を持つ人が多い印象はあります。
独立系FPは「売るものが決まってない」
一方で、独立系FPは基本的に「これを売らなければならない」という商品がありません。相談業務を中心に、お客様一人ひとりのニーズに合わせた提案を行うのが仕事です。
必要に応じて保険や金融商品を提案するFPもいますが、
・特定の会社に縛られない
・選択肢をあらゆる角度から比較できる
・「今は契約しない方がいい」とアドバイスすることもある
というように、ポジショントークは少なくて済む状態で、顧客本位なアドバイスが可能です。
これは「保険屋さん=悪い人」「独立系FP=良い人」というわけではなく、ビジネスの構造上そうなってしまうということです。
違い②「細かい業務まで覚える必要があるか」
独立系FPと保険営業FPでは、日々の業務の細かさや覚えるべき実務内容にも違いがあります。
保険営業FPは「契約実務も重要な仕事」
保険営業FPは、単にプランを提案するだけでなく、実際に契約を成立させるための実務作業も担当します。具体的には以下のような業務が求められます。
▼引受目安の確認
お客様の健康状態や職業などに応じて、保険会社が契約を引き受けるかどうかの基準(引受目安)をチェックします。
▼契約手続きのサポート
申込書の記入方法を案内したり、必要書類を案内・回収したりする業務です。間違いがあると契約が無効になることもあるため、非常に慎重な対応が求められます。
▼コンプライアンス遵守
保険業法や社内ルールに基づいて正しい営業活動を行うことが求められます。不適切な説明や誇大表現をしないよう、最新のルールを常に把握しておく必要があります。
これらの細かい実務は「契約をスムーズに進めるため」に欠かせない重要な業務です。そのため、保険営業FPは提案力だけでなく、事務手続きや規則の正確な理解も求められます。
独立系FPは「実務よりも相談中心」
一方、独立系FPの場合は相談やライフプラン設計の業務が中心のため、契約の実務そのものに深く関与することは少ないです。
たとえば、保険や投資の考え方や選定方法をお伝えすることはあっても、契約手続きは提携先や専門家に引き継ぐことが多いです。
・引受目安など細かい基準の詳細までは日常的に扱わない
・コンプライアンス対応は独立系FP自身の倫理観や顧客契約に基づく
といったスタイルが一般的です。
もちろん、プロとしての正しい金融知識を身につける必要はありますが、「書類を揃える」「審査に対応する」といった実務的な作業は主業務ではありません。その分、相談業務に時間とエネルギーをかけやすいのが独立系FPの特徴です。
違い③「相談の守備範囲の広さ」
顧客からの相談に対して、回答できる範囲にも大きな違いがあります。
保険営業FPは「保険分野に特化」
保険営業FPは、生命保険や損害保険といった保障分野に特化したアドバイスを行います。
・生命保険(死亡保険、医療保険、がん保険など)
・損害保険(自動車保険、火災保険、傷害保険など)
これらの保険商品に関する知識や保障設計のノウハウに精通しているため、「保険を中心としたリスク管理」を考えたい場合には心強い存在です。
ただし、資産運用、不動産、税金、相続はカバー範囲外となることも多く、保険以外の専門的な相談には、他の専門家(税理士や投資アドバイザー)を紹介する場合が多いです。
独立系FPは「ライフプラン全体をサポート」
一方、独立系FPは、保険に限らずお金に関する幅広いテーマを扱います。
・ライフプラン設計(結婚、子育て、住宅購入、老後資金計画など)
・資産運用(投資信託、iDeCo、NISAなど)
・税金対策(所得税、相続税の基本的なアドバイス)
・不動産購入と売却(投資用、居住用)
・相続や贈与の基礎相談
・教育資金や介護資金の準備
といった形で、人生全体を見据えたマネープランをサポートします。
もちろん「税理士さんしか税金対策の具体的なアドバイスはしてはいけない」など、独占業務に触れることはできませんが、保険商品だけでなく、金融商品、不動産、ローンなど幅広い選択肢からアドバイスできるのは大きな強みです。
「今すぐ保険に入りたい」というよりも「これからの人生設計をお金の面からトータルで考えたい」というニーズに応えるのが、独立系FPの役割です。
違い④「報酬体系の違い」
独立系FPと保険営業FPでは報酬形態にも大きな違いがあり、キャリアを考えている人は事前に理解しておくのがおすすめです。
保険営業FPは「販売手数料が中心」
保険営業FPの場合、契約成立後に保険会社から支払われる販売手数料が主な収入源となっています。お客様が生命保険や医療保険などに加入すると、その契約内容に応じた手数料がFPに支払われます。
販売手数料モデルには
・初回のみ支払われる「初回手数料」
・契約が続く限り支払われる「継続手数料」
などがあり、所属企業によって報酬形態は異なります。
独立系FPは「マネタイズ手段が様々」
独立系FPの場合、収入源は複数の手段を組み合わせる形になっています。具体的には、以下のようなマネタイズ手段があります。
▼相談料
初回相談やライフプラン作成、資産運用アドバイスに対して、時間単位・案件単位でフィーを受け取る。
▼顧問契約料
月額制や年額制で、定期的な相談やアドバイスサポートを行い、報酬を得る。
▼紹介料
必要に応じて信頼できる士業(保険代理店、不動産会社など)を紹介し、そこから紹介フィーを得るケースもあります。
▼執筆・講演収入
金融リテラシー向上のためのセミナー講師、メディアへの寄稿などから収入を得ることもあります。
▼スクール
体系的にお金の知識を身に着けたい人向けに、スクールやオンラインサロンを展開する手段もあります。
このように、独立系FPは相談業務だけでなく、さまざまな付加価値サービスを展開することでビジネスを成り立たせています。独立系FPのマネタイズ手段を詳しく知りたい人は『独立系FPの収入源(稼ぎ方)って何?』をご覧ください。
いかがでしたか?
今回は「独立系FP」と「保険営業FP」の違いについて、4つの視点から徹底比較しました。どちらのFPにもそれぞれの強みと役割があり、活動に込める想いも異なります。自分が目指すキャリアを考えるキッカケになれば嬉しいです。もし独立系FPに興味のある方は、ぜひ他の記事もご覧になってみてください。
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