FP技能士だけでは足りない?独立系FPの実務で必要な知識とは

未経験から独立系FP(ファイナンシャルプランナー)を育成するワンクエスト代表の井 章弥です。
この記事では、僕が独立系FPとして約10年間、現場で培ってきたリアルな経験をもとに「独立系FPが実務で必要な知識」をテーマに解説していきます。
資格を取得できたからといって、独立系FPとして活躍できるわけではありません。資格以上に必要なのは「実務で使える知識」です。
なぜなら、FP技能士の知識だけでは現場の課題に対応できないからです。FP試験で学ぶ知識と実際に役立つ知識には大きな差があるからです。
今回の記事では、FP技能士の勉強だけでは身につかない、独立系FPに必要な実務知識を分野ごとにくわしく紹介していきます。
FP技能士の資格を取っている方や、これからフリーランスとしてFPの道を選ぼうとしている方には役立つ内容となっていますので、ぜひ最後までお付き合いください。
①保険証券の見方
保険証券は相談者の人生設計を知る手がかりになります。なぜなら、保険は生活の不安やリスクを補う仕組みだからです。
まず、保険証券には「契約内容」「保障期間」「保険金額」などの情報が記載されています。これを読み取ることで、相談者がどんなリスクに備えているかが見えてきます。
たとえば、死亡保険に多く加入している人は家族への責任を意識している可能性が高いです。一方で、医療保険やがん保険が手薄な場合、老後の医療費リスクに気づいていないこともあります。
見るべきポイントは次のとおりです。
・契約の種類(定期か終身か)
・保険金の金額と支払われる条件
・払込期間と保険期間
・特約の有無(入院、手術、通院など)
・保険料の金額と更新の有無
これらを確認することで、不要な保障や過剰な支出に気づくことができます。また、更新型の場合は将来の保険料の増加について注意を促すことも重要です。
実務では、証券のコピーをもらい、まずは一覧表を作ります。そして、現在のライフステージに合っているかを判断して、見直しの提案をします。
FP技能士の試験では理論的なことは学びますが、証券そのものを読み解く力はあまり身につきません。だからこそ、現場で証券を何枚も見る経験が、確かな実務力につながります。
保険会社によって設計書の見方が異なるのが厄介ですが、場数をこなして習得していきましょう。
②ライフプラン表の作成
相談者の未来を見える形にするには、ライフプラン表が必要です。なぜなら、お金の不安は「見えないこと」から生まれるからです。
ライフプラン表とは、家族の年齢や収入、支出、貯金の推移などを表にまとめたものです。これによって、教育費の山や老後の生活費が足りるかどうかが一目でわかります。
まず、作成の前に家族構成を確認します。そして、年収や支出の内訳、現在の貯金額、保険や住宅ローンの有無などを聞き取ります。
次に、聞いた内容をもとに、以下のような項目をまとめます。
・家族全員の年齢
・収入(給与、年金など)
・支出(生活費、教育費、住居費など)
・年間の収支(黒字か赤字か)
・貯金の残高(前年からの繰り越し)
これを表にすると、将来の資金の流れがはっきりします。たとえば、子どもが大学に進学する時期に赤字になることがわかれば、今から準備が必要だと伝えることができます。
さらに、老後の生活費が年金だけでは足りないと判明した場合、資産運用や保険の見直しを提案する根拠にもなります。
この表は相談者にとって「将来の地図」のようなものです。だから、数字の根拠を説明しながら、一緒に作成していくことが大切です。
FP試験ではシミュレーションの方法は学びますが、実際のライフプラン表の作成には経験が必要です。相談者の不安や希望をくみ取って、現実的な数字に落とし込む力が求められます。
③債券運用の魅力
安定した資産形成をめざすなら、債券の知識は欠かせません。なぜなら、債券は元本の安全性が比較的高く、予測しやすい収益があるからです。
債券とは、お金を貸す代わりに利子を受け取る仕組みの金融商品です。満期になれば、元本が戻ってきます。
たとえば、国が発行する「国債」は最も信用度が高いとされています。会社が発行する「社債」は国債より利回りは高いですが、信用リスクも高くなります。
債券の主なメリットは以下のとおりです。
・定期的に利子が受け取れる
・満期まで持てば元本が返ってくる(例外あり)
・価格の変動が小さく、比較的安定している
一方で、注意点もあります。
・途中で売ると、価格が変動して損をすることがある
・発行元が倒産すると、元本が戻らないことがある
・物価が上がると、実質的な利回りが下がる
相談者に債券をすすめるときは、その人の資産のバランスを見ながら説明します。特に、年齢が高い人や、大きなリスクを取りたくない人には向いています。
実務では、債券の種類や利回り、信用格付けを調べて、具体的な商品を紹介することもあります。また、投資信託の中に組み込まれている債券の割合にも注目します。
FP技能士の試験では債券の種類や用語の知識を問われます。けれど、実際の相談では「どのくらい増えるのか」「損することはあるのか」といった問いに、かんたんな言葉で答える力が必要です。
④不動産の業界構造
不動産のしくみを知らないと、相談者に正確なアドバイスはできません。なぜなら、不動産取引には多くの立場と利益が関係しているからです。
不動産業界は大きく分けると「売買」と「賃貸」に分かれます。その中に「仲介」「管理」「開発」などの業者が関わっています。
たとえば、家を買いたい相談者がいるとします。そのとき関わるのは次のような人たちです。
・売主(家を売る人)
・買主(家を買う相談者)
・仲介会社(売主と買主をつなぐ)
・金融機関(住宅ローンを提供する)
・登記を担当する専門家
このように、一つの取引でも複数の立場の人が関わります。だから、誰が何のために動いているかを理解しておかないと、正しい判断ができません。
特に、仲介会社は売主から手数料を受け取っている場合が多くあります。そのため、中立的に見えて、実は売主寄りの提案をしていることもあります。
また、不動産の価格は「相場」だけでなく、「地域性」や「将来の見通し」によっても変わります。そうした情報を見極めるには、業界のしくみや商習慣を知っておく必要があります。
実務では、住宅購入や相続、賃貸経営の相談を受けることが多いです。そのたびに、建物の評価方法や管理の手間、空室リスクなどを説明しなければなりません。
FP試験では、借地権や区分所有などの法律的な知識を学びます。でも、実際の相談では「この物件を買っても大丈夫か」「家賃が入らなかったらどうなるか」といった具体的な悩みに答える力が求められます。
⑤確定申告の流れ
節税を考えるなら、確定申告の基本を知らなければなりません。なぜなら、申告のしくみを理解することで、合法的に税金を減らせるからです。
確定申告とは、1年間の所得や経費をまとめて、税金を自分で計算して申告する手続きです。会社に勤めていない人や、給与以外の収入がある人が対象となります。
まず、申告が必要かどうかを確認します。次のような場合は確定申告が必要です。
・自営業やフリーランスとして収入がある
・不動産収入や配当、退職金などがある
・医療費が多くかかった、またはふるさと納税をした
・年収が2,000万円を超える給与所得者
申告の時期は毎年2月16日から3月15日までです。この期間に、前年の1月から12月までの収入と支出をまとめます。
手続きの流れは次のとおりです。
・収入と経費の記録をまとめる
・必要な控除(医療費、扶養、保険料など)を整理する
・国税庁の申告書作成コーナーで書類を作る
・電子申告または郵送、税務署への持ち込みで提出する
・納税が必要な場合は期日までに支払う
相談者には「何を集めたらよいか」「いつまでにやるのか」を具体的に伝える必要があります。また、節税のために使える制度(青色申告、控除、経費の計上など)もあわせて説明します。
FP技能士の試験では税金の種類や計算方法は学びます。しかし、実際の相談では書類の書き方や証拠の保管方法など、細かい実務の知識が問われます。
だからこそ、税理士との連携や、最新の制度変更への対応もふくめて、実務に即した知識が必要になります。
いかがでしたか?
独立系FPとして活躍するためには、試験で得た知識だけでは足りません。なぜなら、現場で必要とされるのは「相談者の人生に寄り添う実践的な力」だからです。独立を目指す方にとって、本当のスタートは資格を取ってからです。実務を通して、少しずつ経験を積み、自分の強みを見つけてください。
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