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独立系FP(お金の先生)という生き方

独立系FPが経営者を顧客にする3つの戦略

未経験から独立系FP(ファイナンシャルプランナー)を育成するワンクエスト代表の井 章弥です。

この記事では、僕が独立系FPとして約10年間、現場で培ってきたリアルな経験をもとに「どうやって経営者を顧客にするか」をテーマに解説していきます。

僕自身、駆け出しの頃はサラリーマン家庭の家計相談からスタートしましたが、徐々に経営者との接点を持つようになり、気づけば主な顧客層が経営者になっていました。

特にこれからフリーランスとしてFPの道を選ぼうとしている方や、FP技能士の資格を取ったばかりの方には役立つ内容となっていますので、ぜひ最後までお付き合いください。

経営者を顧客にするメリット

経営者を顧客にするというのは、専門性や信頼が求められる分ハードルも高いのですが、それを上回るだけの「価値」と「やりがい」があります。

ここでは、僕自身が10年間の実務の中で実感してきた、経営者を顧客にする主なメリットを3つ紹介します。

ビジネスと人生の学びが多い

経営者を顧客にする最大の魅力のひとつは、ビジネス面はもちろん、人生観においても多くを学べることです。

経営者は日々、判断と決断の連続です。売上の伸ばし方、人材の育て方、資金調達や税金対策まで、幅広い分野に精通している必要があります。

経営者の経験や哲学を、会話の中で自然と聞くことができるのは、独立系FPとしてとても貴重です。

例えば、ある顧客の経営者は「社員の人生に責任を持つ」という信念のもと、事業を拡大していました。その話を聞くたびに、僕自身も「人に対してどう責任を持つか」「仕事の意義とは何か」といった根本的な問いを考えさせられました。

こうした学びは、自分のビジネスの方向性や、人生設計にも大きな影響を与えてくれます。お金のアドバイスをする立場でありながら、逆にこちらが成長させてもらっている実感があります。

これは書籍やセミナーでは決して得られない「現場感」です。そして、こうした学びは、他の顧客へのアドバイスにも活かせる大きな財産になります。

やりがいがある

経営者に対する支援には、非常に前向きでやりがいのある瞬間がたくさんあります。

たとえば、「将来のビジョンを実現するために、どのように資金計画を立てるべきか」「社員に福利厚生を充実させたいが、どう設計すれば無理なく続けられるか」など、経営者の相談内容は単なる数字の話を超えています。

夢や理念、想いが背景にあることが多く、それを実現する手助けができるのは大きな喜びです。

FPとして伴走しながら、会社が少しずつ成長していく過程を見ることは、自分自身の仕事の成果を実感できる最高の瞬間です。

単に「節税になった」「保険を見直した」だけではなく、「事業が拡大した」「社員を安心して雇えるようになった」といった、経営の前進に直接関われる感覚があります。

紹介が生まれやすい

経営者は一度信頼を寄せた相手には、とてもオープンで協力的な一面を持っています。

これは、経営という孤独で責任の重い立場にいるからこそ「信頼できる専門家」とのつながりをとても大切にしているからです。

独立系FPとして、専門性だけでなく誠実な対応を重ねていくと、次第に「この人なら、うちの仲間にも紹介できる」と思ってもらえるようになります。

経営者は「他人に良いものをシェアする」文化を持っている人が多く、信頼できるFPとして位置づけられると、無限連鎖的に新しいご縁が生まれます

顧客にする方法①「自分が経営者になる」

経営者を顧客にしたいのであれば、自分自身が経営者になることが1番早いです。僕自身も、個人事業主から法人化したことで、経営者との関係性が一気に変わりました。

「同じ立場」だから生まれる信頼

法人を設立すると、事業者としての責任や視点が大きく変わります。

たとえば、法人の資金繰り、税務申告、人材採用、社会保険の負担など、個人事業では経験しないような課題に直面します。これらの経験が、経営者と話すときの共通言語になります。

“経営者同士”として対等な立場から話ができると、一気に信頼関係は深まります。

自分の体験が「説得力」になる

自分の法人でも実践しているお金の対策であれば、具体的なメリット・デメリットを実体験として語ることができます。

「私自身もこの保険に加入しています」「うちもこうやって節税しています」と言えると、相手にとっての安心感は段違いです。これは、単なる知識提供よりも信頼性につながります。

顧客にする方法②「税金を徹底的に学ぶ」

自分が経営者にならなくとも、経営者から信頼を勝ち取る手段はあります。

それは圧倒的な金融知識です。その中でも絶対に外せないのが「税金」の知識です。

税金は経営者にとって最も関心が高いテーマの一つであり、税理士さん以外の意見を求めているケースもよくあります。

独立系FPとしてこの分野を深く学ぶことで、他の専門家にはないポジションを築くことができます。

経営者の税金の悩み

経営者の多くは、売上と同じくらいに「いかに法人と個人にお金を残すか」を意識しています。その時に影響が大きいのが、法人税や消費税、社会保険料といった支出です。

「思ったより税金が多かった」「利益が出たのにキャッシュが足りない」といった相談は日常茶飯事です。

こうした悩みに対して、税理士とは違う視点から中長期的な資金計画をアドバイスできると、強い信頼を得られます。

記帳代行も手段の1つ

まずは記帳代行を含めた経理周りのサポートから関わるのも1つの戦略です。

「毎月の経理処理」や「帳簿チェック」といった地道な業務を手伝うことで、経営者との接点を増やすことができます。その中で「法人のお金の課題」が見えてくるので、そこに対する解決策を提示すれば信頼を獲得できます。

また、FP自身にとっても経営の現場をより知れる機会になり、成長ができるのでおすすめです。

顧客にする方法③「法人保険を学ぶ」

経営者を顧客にしたいなら、法人保険の知識は必須です。多くの経営者は、すでに何らかの保険に加入しているか、過去に多数の保険営業を受けてきた経験があるからです。

「セカンドオピニオン」としての立ち位置

経営者の多くは、営業マンがおすすめした保険商品をよくわからずに契約しており、「本当にこれでいいのか?」と不安を抱えています。

そんなとき、独立系FPが中立的な立場からアドバイスすることで、セカンドオピニオンとして非常に信頼されます。

たとえば、
・現在の保険が目的に合っていない(節税か保障か、退職金準備か)
・解約返戻金のピークや税務上の影響を把握していない
・他にもっと効率の良い手段がある

といったポイントを指摘できれば「本当に自分のことを考えてくれている」と感じてもらえるでしょう。

多様な手段を持っておく

法人保険はたしかに有効な選択肢の一つですが、目的によっては他にも適切な手段が存在します。だからこそ、FPとしては「保険ありき」ではなく、経営者の目的に合わせた柔軟な提案が求められます。

たとえば、節税が主な目的であれば、中小企業倒産防止共済(いわゆるセーフティ共済)も有力な選択肢です。掛金が全額損金算入でき、万が一の際には無担保・無保証で借入ができるというメリットがあり、資金繰りの備えとして有効です。

また、運用や将来の資産形成が目的であれば、企業型確定拠出年金(DC)の導入を検討する価値があります。保険よりも手数料が低く、従業員の福利厚生にもつながるため、会社全体の魅力向上にも寄与します。

このように、法人保険を絶対視するのではなく、他の制度と比較をしたり、組み合わせて設計できるかどうかが、独立系FPとしての力量の見せ所です。

いかがでしたか?

必ずしも経営者を顧客にする必要はありませんが、経営者を顧客にする力を身につければ、より独立系FPの仕事を楽しめると思います。もし独立系FPに興味のある方は、ぜひ他の記事もご覧になってみてください。

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