独立系FPは顧問契約を獲得できるのか?

未経験から独立系FP(ファイナンシャルプランナー)を育成するワンクエスト代表の井 章弥です。
今回は「独立系FPは顧問契約を獲得できるのか?」というテーマで解説していきます。
独立系FPが安定した収益基盤を築くために「顧問契約を獲得したい」と考えるのは自然な流れです。特定の金融機関に所属することなく、自らの力で顧客と直接契約を結び、定期的にフィーを得るビジネスモデルに憧れる方も多いでしょう。
この記事では、独立系FPを10年継続してきた僕の所感も交えながら「顧問契約を獲得できるのか?」そして「安定した収入を作り出す方法」について詳しく解説していきます。
僕の経験上、顧問契約は難しい
僕自身、独立系FPとして活動を始めた当初は「顧問契約を複数結べれば、収入も安定するだろう」と考えていました。しかし、実際に走り出してみると、現実は想像していたよりもずっと厳しいものでした。
確かに、単発の相談やスポット契約は比較的取りやすいです。しかし「毎月お金を払って継続的にサポートを受ける」という顧問契約となると、途端にハードルが上がります。
独立系FPを志す方には、顧問契約だけに頼った収益モデルを設計するのはおすすめできないと強く伝えたいです。
顧問契約が難しい理由
①日本には顧問契約の文化がない
アメリカでは「リテイナー契約」(毎月一定額の報酬を受け取るスタイル)で独立系FPがビジネスを安定させているケースもありますが、日本では「お金を払って個人のアドバイザーに長期間相談し続ける」という文化がまだ根付いていないことが、大きな壁となっています。
アメリカのように、日本でも税理士・弁護士と並ぶくらいに独立系FPの地位が向上すれば、顧問契約が当たり前の時代になるかもしれません。でも残念ながら、僕の感覚では、まだまだ先は長そうです。
② 継続してもらえない
仮に顧問契約を獲得できたとしても、継続させることがさらに難しいという課題があります。
ライフプランや資産運用の相談は、日々大きな変化があるものではありません。一度プランが固まると、半年、1年と経っても大きな動きがないことが普通です。
顧問契約ができても、時間の経過と共に顧客側のモチベーションも下がり「今月も特に相談することないし、解約してもいいかな」となりやすいのです。顧問契約は継続性の確保が非常に難しいビジネスモデルです。
③ 富裕層が対象になる
一般的な会社員層は「継続的な支払い」を負担に感じるため、こちらから提案してもなかなか契約には結びつきません。
顧問契約を結べるとしたら、高所得者や資産家など富裕層が中心です。しかし、そういった層はすでにプライベートバンカーや大手金融機関の担当者から手厚いサービスを受けている場合が多く、新たに独立系FPに頼る動機づけが弱い傾向にあります。
④フィー型ビジネスモデルに勝てない
さらに、近年ではIFA(独立型の証券アドバイザー)やロボアドバイザーなど、フィー型のビジネスモデルが一般化してきています。これらは「資産運用残高に応じた手数料」など、ユーザーが支払いに納得しやすい仕組みを持っています。
独立系FPが「相談だけに対してフィーをもらう」形を提案しても「それなら成果主義で運用報酬を支払おう」と顧客に思われやすく、競争が非常に厳しいのです。
顧問契約よりもお勧めの戦略
独立系FPとして安定した収益基盤を築くためには、顧問契約だけにこだわらず、より現実的でニーズの高い方法を取り入れるのが重要です。
ここでは、僕自身も実践してきた「お勧めの戦略」を具体的に紹介していきます。
①相談者にマネープラン表を納品してお金を貰う
最もシンプルかつニーズが高いのが、マネープラン表を作成・納品するビジネスです。
ライフプランシミュレーションをもとに、将来の収支予測や資産形成計画を「見える化」してあげることで、相談者にとって非常に分かりやすい成果物となります。
これにより、相談者は「今後どれくらい貯蓄すればいいか」「住宅購入や教育資金のタイミング」「老後資金の見通し」などが具体的に把握でき、大きな安心感を得られます。
また、マネープラン表は一度作成すれば納品できるので、FP側にとっても労力と報酬のバランスが良く、入り口商品として非常に優れています。
②信頼できる提携先をお繋ぎして紹介料を貰う
次に有効なのが、提携先を作るビジネスモデルです。お客様のニーズに応じて、信頼できるパートナー企業(不動産仲介会社、保険代理店、記帳代行会社など)を紹介し、そこから紹介料を受け取る仕組みです。
▼このやり方のメリット
・顧客側は専門家から高いサービスを受けられる
・自分が専門分野を極める必要がない
・少ない工数でマネタイズできる
もちろん、あくまで「顧客本位」での提携が前提です。自分が心から信頼できる提携先と組むことで、顧客満足度も高まり、相互に紹介しあうことも可能になります。
③具体的な商品をご提案して企業からお金を貰う
独立系FPといえど、商品を一切扱わないと決める必要はありません。特定の分野や商品に偏らないフラットな立場で、顧客にとって本当に必要な商品を提案する方法もあります。
「金融の百貨店」のようなイメージで幅広く商品を取り扱う方法もありますし、「お金のセレクトショップ」のように自分が心から良いと思えるものだけを取り扱うのもアリです。
そうすることで、投資信託、保険、不動産小口化商品など、さまざまな選択肢の中から最適なものを紹介し、商品開発をしている企業から販売手数料や紹介料を受け取ることができます。
▼このビジネスモデルで大切にすべきこと
・特定の商品を押し売りしない
・顧客本位を徹底する
・商品の仕組みやリスクを正直に説明する
これらの姿勢を大切にしていれば、たとえ商品を取り扱ったとしても、公平中立的な立場からのアドバイスだと顧客に思ってもらえるでしょう。
また、預かり資産残高や顧客数を増やすことができれば、顧問契約よりも安定したビジネスモデルを築くことが可能です。
④お金に関するスクールを販売してお金を貰う
さらに、オンラインスクールや講座ビジネスも強力な選択肢です。
「お金の教養」をテーマにしたスクールを開講し、SNSや口コミを通じて受講生を集めることで、ストック型収益を作り出せます。
実際、ワンクエストに所属しているFPの中にも、300人以上の受講生を持つ人がいます。最初は地道に信用を積み重ねる必要がありますが、SNS時代の今、個人でも十分に実現可能なモデルです。
独立系FPのマネタイズ方法を他にも知りたい方は『独立系FPの収入源(稼ぎ方)って何?』もご覧ください。
独立系FPがまず考えるべきこと
独立系FPとして安定的な収益を作るために最も重要なのは、戦略以上に「誰の力になりたいのか?」を明確にすることです。これがはっきりしていないと、サービス内容も価格設定も、発信する情報もすべてがブレてしまいます。
「誰にとっての自分なのか?」を明確にする
最初に考えるべきは、具体的なターゲット像です。
例えば、
・富裕層向けに資産管理のサポートをしたいのか?
・一般家庭に対して家計改善や教育資金対策を提案したいのか?
・会社員の資産形成を支援したいのか?
・フリーランスや法人の資産を最適化したいのか?
ターゲットによって、必要とされるスキルや提案内容、収益モデルもまったく変わってきます。
たとえば、富裕層が相手なら、資産運用や相続・事業承継に強くなる必要がありますし、一般家庭向けならライフプランや住宅ローンの相談力が求められます。
「誰に貢献したいのか」が決まれば、学ぶべき知識や積むべき経験も絞り込まれます。
顧客層に合わせたマネタイズを考える
ターゲットが定まったら、その人たちにとって自然な形でお金をいただける仕組みを考えます。
・富裕層向け → IFA登録後の商品紹介
・会社員向け → 家計改善プランの作成や少額からの資産形成スクール
・事業主向け → 法人保険や財務戦略サービス
このように、ターゲットに合わせたマネタイズ手段を設計することが成功のカギです。
誰にでも受けようとするのではなく「この人たちのために自分は存在している」という芯を持つことで、情報発信にも説得力が増し、自然と理想的な顧客に囲まれるようになっていきます。
いかがでしたか?
本記事では、独立系FP歴10年の僕の経験をもとに「独立系FPが安定した収入を作る方法」について解説してみました。ご参考になれば幸いです。もし独立系FPに興味のある方は、ぜひ他の記事もご覧になってみてください。
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