独立系FPが「信頼できる提携先」を作る手順

未経験から独立系FP(ファイナンシャルプランナー)を育成するワンクエスト代表の井 章弥です。
この記事では、僕が独立系FPとして約10年間、現場で培ってきたリアルな経験をもとに「信頼できる提携先の作り方」をテーマに解説していきます。
独立系FPの相談の内容は多岐にわたり、保険・不動産・投資・相続・税務など、1人ですべてを完璧にカバーするのは現実的ではありません。
そのため、独立系FPにとって信頼できる提携先は不可欠であり、顧客に貢献するという側面でも、マネタイズの側面でも超重要です。
特にこれからフリーランスとしてFPの道を選ぼうとしている方や、FP技能士の資格を取ったばかりの方には役立つ内容となっていますので、ぜひ最後までお付き合いください。
まずは各分野の知識を身につけること
信頼できる提携先を見つける前に、独立系FPとしてやるべきことは広く浅く「各分野の金融知識」を身につけることです。これなしでは良い提携先を作ることは不可能です。
なぜ知識が必要なのか?
独立系FPとして活動していると、顧客から次のような相談を受ける場面が頻繁にあります。
「保険の見直しをしたいんですが、今のプランって妥当なんでしょうか?」
「不動産投資を勧められたけど、本当にやるべきかどうか…」
「税理士さんって、どこに頼めばいいんでしょうか?」
ここで、もしFPが「その分野は詳しくないので、〇〇さんに聞いてみてください」と答えるだけだったらどうでしょう?
もちろん専門家に任せること自体は悪くありません。ただし、何も意見が言えないFPに対して、顧客は本当に信頼を寄せられるでしょうか?
たとえ専門家に任せるにしても、最低限の知識があれば、
「この保険は、掛け捨て型で月々のコストは抑えられていますが、保障内容はこうなっています」
「この不動産は利回りこそ高いですが、立地や将来の資産価値については注意が必要です」
「この税理士さんは記帳代行だけでなく、決算前に節税提案もしてくれます」
というふうに、顧客に補足説明を加えることができます。つまり、提案の“説得力”が大きく変わってくるのです。
FPが顧客の「通訳者」としての役割を果たすには、分野を横断的した知識が不可欠です。逆に言えば、知識がないまま人を紹介すると「このFPはただの紹介屋なんじゃないか?」と思われるリスクもあります。
感覚ではなくロジックで判断する
提携先を作り、それぞれの分野の専門家を頼るのは良いですが、「その人が本当に信頼できるかどうか」を見極めることは重要です。
それには、自分自身に最低限の判断軸を持ち、「感覚」ではなく「ロジック」に基づいてできるようになる必要があります。
実際、僕自身も独立して最初の頃は「感じのいい人」や「大手に勤めている人」=信頼できる、といった感覚で判断してしまっていました。しかし、そういう表面的な要素だけでは、本当の意味で顧客の利益を考えてくれる提携先かどうかは分かりません。
ロジックで判断するためには、以下のような「判断ポイント」を持っておくと良いでしょう。
【保険業界】
提案されている商品は、顧客のライフプランに対して妥当か?掛け捨て型・積立型のメリット・デメリットは説明されているか?
【不動産業界】
利回りだけでなく、管理費・修繕積立金・空室率などリスク面が説明されているか?
【税理士業界】
ただ帳簿をつけるだけではなく、節税や資産形成の視点があるか?
これらを意識した上で話を聞けば、相手の提案が「顧客ファースト」か、それとも「自社都合」かを見抜く目が養われます。顧客を損させないように、まずはFP自身が学んでいきましょう。
知識をどこで身につけるか?
書籍、専門セミナー、FP資格の勉強、他業種の実務者との対話など、学ぶ方法はいろいろあります。
僕がおすすめするのは、実際に話を聞きながら学ぶスタイルです。セミナーや勉強会に積極的に参加し、疑問に思ったことはその場で聞くことで吸収力高く学ぶことができます。
また、自分自身がお客さんになるのも良いと思います。提案されて良いと思ったものは契約してみる。その時の気持ちも体感しておくと、顧客により話しやすくなります。
自分の「お金の哲学」を決める
信頼できる提携先を見つけるために欠かせないのが、自分自身の「お金に対する哲学」を明確に持つことです。これは、単なる知識やノウハウとは別の話です。
提携先を選ぶとき、彼らの考え方と自分の価値観が合わなければ、どれだけ実績があり、説明が上手でも、長期的に信頼関係を築くのは難しくなります。逆に、同じ方向を見ているパートナーとは、自然と強固な関係が生まれます。
ここでは、僕自身がこれまでに考えてきた「お金の哲学」をいくつか紹介しながら、どうやって自分の軸をつくるかを考えていきます。
正しい保険の入り方とは?
独立系FPの中でも、保険の提案スタイルは大きく分かれます。主に以下の2つの考え方が対立しやすいポイントです。
【掛け捨て派】
必要な保障を必要な期間だけ。余計な貯蓄機能は不要。
【積立型派】
将来に向けた貯蓄も兼ねた、長期的な保障設計が大切。
僕自身は、保険は「保障を目的としたもの」に限定すべきと考えています。貯蓄や投資は、もっと自由度の高い金融商品で行うべきだからです。
つまり、提携先の保険営業担当が、貯蓄型商品を万能のように語るようであれば、根本的に自分の哲学と合わないという判断をします。
不動産投資は悪なのか?
不動産投資についても、FPの中で意見が分かれます。セミナーなどでは「絶対やめるべき」と断言する人もいますし、一方で「不動産こそ資産形成の要」と言う人もいます。
僕は、不動産投資は業者を間違えなければ、良い選択肢の1つになると考えています。
・節税要素を強くアピールしない
・管理体制や空室リスク、資産価値の下落について説明する
・相場よりも安い物件を提案している
これらに当てはまる業者で不動産投資をした場合、キャピタルゲインやインカムゲインを狙えると考えています。実際に僕の周りでは不動産で収益を得ている投資家がたくさんいます。
マイホームは買うべきなのか?
これもよく相談されるテーマです。
・賃貸 vs 購入
・ローンは変動?固定?
・「家は資産」なのか?
僕は、マイホームの購入については「その人の属性と価値観」に応じて判断するべきだと考えています。
たとえば、経営者の場合は、金利や税制面を踏まえると賃貸の方が合理的なケースが多いです。一方で、会社員で家賃補助があまりない方であれば、住宅ローンを活用して購入した方が経済的に得になることもあります。
また、住まいに「所有している安心感」を重視するタイプか、「環境の変化を楽しみたい」柔軟なタイプかなど、性格的な傾向も含めて総合的に判断することが大切です。
良い税理士さんとは?
「税理士にも“違い”ってあるの?」と思う方もいるかもしれませんが、実は大いにあります。
【記帳代行型】
帳簿と申告書を淡々と処理するだけ。
【アドバイス型】
節税や資金繰り、将来のキャッシュフローまで含めて提案してくれる。
正直、AI時代に税金の計算をしてくれるだけの税理士さんはあまり価値がありません。顧客のビジョンまで理解しようとする税理士で、短期の節税だけでなく、長期の経営計画まで考えてくれる先生が良いと思います。
たくさんの業者と話す
信頼できる提携先を見つけるために欠かせないステップが「実際に多くの業者と話をすること」です。
これは、単に比較するためだけでなく、自分の判断軸を磨き、業界のリアルな事情を把握するためにも非常に重要です。
たくさんの業者と話すメリット
各提携先を作るうえで、比較対象が1人しかいなければ、それが“良い”のか“マシなだけ”なのか、分かりません。最初から「良い人」に当たるのは稀で、比較の中で“良さ”が浮き彫りになるものです。
▼たくさんの業者と話すメリット
・トークや提案資料から「顧客本位」か「売上本位」かが見えてくる
・同じ業界でも、スタンスや哲学がまったく異なることが分かる
・自分の「相性の良いタイプ」や「こういう人は合わない」が明確になる
1分野の提携先を作るにあたり、少なくとも5社は話を聞いてみましょう。
アポイントの取り方のコツ
「じゃあ、どうやって業者とつながればいいの?」という疑問を持つ方も多いでしょう。
でも実は、FPという立場は、他業種からすると非常に“話を聞いてもらいやすい存在”です。おすすめのアプローチ方法を紹介します。
【紹介してもらう】
まずは知人や同業者から紹介を受けるのが最もスムーズです。
紹介の際は「顧客対応の参考にしたい」「提携の可能性がある人を探している」と正直に伝えるのがポイントです。
【セミナーや勉強会で名刺交換】
保険会社、不動産会社、税理士事務所などが主催する勉強会は、営業担当者や士業と自然に接点を持てる場です。
名刺交換したあと、「今度、個別にお話を伺えませんか?」と連絡するのが基本パターン。
【Web経由で直接連絡する】
少し勇気がいる方法ですが「独立系FPとして提携先を探しており、顧客への紹介も検討しています」と正直に伝えれば、断られることはほとんどありません。
特に最近は、独立して保険・不動産・士業の方も増えており、提携に前向きな人が多い印象です。
「お試し」からスタートする
信頼できる提携先候補と出会えたとしても、いきなり顧客を任せたり、正式な提携関係に進むのはリスクが高いです。特に、独立系FPは自分の信用がすべて。提携先の失敗が、そのまま自分への信頼低下につながる可能性もあります。
だからこそ、まずは「お試し」から始めましょう。リスクを最小限に抑えつつ、関係性を深める現実的なステップになります。
ステップ1:自分が顧客になってみる
提携候補の業者に対して、まずは自分自身が顧客としてサービスを受けてみると、次のようなポイントをチェックできます。
・初回面談の進め方やヒアリングの丁寧さ
・商品やサービスの説明の分かりやすさ
・デメリットやリスクについても誠実に話すか
・アフターフォローがあるかどうか
「営業を受けてみれば、すべてが分かる」と言っても過言ではありません。僕自身、ほとんどの提携先の顧客になっています。実際に体験して「これは自分の顧客にも安心して紹介できる」と思えた方としか組みません。
ステップ2:顧客紹介+同席という形で試す
信頼感がある程度築けてきたら、次は顧客を1人だけ紹介して、同席するという方法があります。ここでは、自分の顧客に「この業者さんと一度話してみませんか? 私も同席しますので安心してください」と伝えた上で、面談に立ち会います。
・自分以外にも良い対応をしてくれるか
・顧客に対して失礼のない細かな対応をしてくれるか
・提携先サービスは本当に良いものなのか
・顧客の実際の反応はどうなのか
これらを改めて確認することで、本当のスタンスが見えてきます。提携を進めるか否かの判断材料として非常に有効です。
ステップ3:「案件ベース」で提携を始める
提携といっても、最初から「契約書を交わして業務提携!」のような大げさな形にする必要はありません。むしろ、1件ごとの案件ベースで、少しずつ一緒に仕事をしてみる方が、お互いの相性や信頼関係を自然に確かめることができます。
案件ベースでの連携は、お互いにとって以下のようなメリットがあります。
・小さなトラブルがあっても大きなリスクにならない
・お互いの業務スタイルや対応スピードを把握できる
・継続するかどうかを冷静に判断できる
「いきなり本格的な提携をしない」ことは、信頼関係を築く上で重要です。
良い関係を築いていくために
信頼できる提携先と出会い、「お試し」のステップを経て、「この人なら大丈夫」と確信できたとします。ですが、そこで安心してしまうのはまだ早いです。
本当の意味で成果を上げていける提携関係というのは、関係がスタートしてからどう育てていくかにかかっています。ここでは、長く良好なパートナーシップを築くために、僕が実際に心がけているポイントを紹介します。
信頼できる提携先には“Give”を惜しまない
良い提携関係をつくるうえで、最も大切なのは「Giveの精神」です。
顧客を紹介する
→ 同席してフォローする
→ 案件後にフィードバックを伝える
これらすべてが「こちらが得をする」ことを目的とした行動ではなく、相手がよりよいサービスを提供できるようにというスタンスで行うべきです。
提携が続かない人の多くは「紹介してあげたんだから、次はあなたからも紹介してよ」という見返りありきの思考に陥っています。これでは、信頼関係は築けません。
FPの仕事は“信頼ビジネス”であり、その信頼は無償のGiveの積み重ねでしか得られません。
「自分が少し損をする」くらいでちょうどいい
僕が意識しているもう一つの姿勢は「少し自分が損をするくらいでちょうどいい」ということです。
・紹介手数料を多く取りすぎない
・自分の稼働時間を使ってサポートする
・相手が失敗したときはフォローする
「短期的には割に合わない行動」が、長期的には大きな信頼となって返ってきます。
信頼は“お金”よりも価値がある
独立系FPにとって「この人に相談すれば解決してくれる」と思われる状態が最大の資産です。そして、その信用を支えるのが、提携先とのネットワークです。
だからこそ、自分にとって都合のいい人を探すのではなく「この人を応援したい」「一緒に顧客の人生に向き合っていきたい」と思えるレベルの人を見つけることが、本当に意味のある提携です。
そして、その思いを行動で示していくことで、結果的に提携先からも同じように大切にされ、持続可能で強い協力関係が築かれていきます。
いかがでしたか?
独立系ファイナンシャルプランナーとして、顧客に本当に価値ある提案を届けるためには、自分ひとりの力だけでは限界があります。信頼できる提携先を持つことは、独立系FPとして成功するための大きな鍵です。もし独立系FPに興味のある方は、ぜひ他の記事もご覧になってみてください。
「未経験から独立系FPを育成する講座」の新規受講者も募集しております。僕や実際に独立系FPとして活躍する先輩が相談に乗りますので、ご興味のある方はお気軽にカウンセリングフォームからお申し込みください。